妄々録拾穂抄

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学んだスキルが身につかない3つの障害

読まなくていい前置き

世の中に出回る自己啓発やビジネススキルの本は数えたらキリがない。それらを読むのが好きだという人も少なくないはずだ。基本的に趣味の読み物ではないからみんな何を求めるかというと、新しいことを学ぶために本を手に取る。そんなに誰もが色んなビジネス本を買っているなら社会はすごいスキルを持った人たちで溢れているのだろうか?

でも私たちは知っている。どんなに自己啓発やビジネススキルの学習にハマってもすべてが終わった後には何が身についたかよくわからない気持ちがあること。あんなにたくさん知識を手にしたのに、仕事で役立つことがひとつでもできるようになったのだろうか?

そう自問自答して、今度はこう思う。なぜノウハウやスキルは身につかないのだろう。これは単純だが一番大きな悩みだ。身につかないことの何が問題で、何が邪魔をしているんだろう。

3つの障害

端的に言ってしまうとその障害は3つある。

  1. 受け取る情報が多すぎる
  2. 捉え方がネガティブすぎる
  3. フォローアップの仕組みがない

たったこれだけだ。たいしたことない? だが概して拍子抜けするようなことが重大な障害だったことがよくあるのではないか。幸いこれは重大な問題でも世紀の難問ではない。この3つの障害をどう捉え直して心理的にクリアするか、そしてたったひとつの解決法で十分にスキルを身につけることができるか、その話だ。

第1の障害:受け取る情報が多すぎる

まず問題なのは私たちが何かを学ぼうとするとき、受け取る情報があまりに多すぎるということだ。これは言うまでもない。あらゆるメディアにおいて日々新しい情報が常に発信され続けている。ビジネス本や記事一つ取っても手を変え品を変え新しいスキルやアイディアの紹介が毎日行われている。

Aというスキルを身に着けたい、でもBというスキルも良さそう。あれこれ有名人の紹介や誰かの解説を読んでふむふむと納得したつもりで次の情報の収集へ向かってしまう。さて、これで何か身につくのか。

人は言う、情報のアンテナは常に張り巡らせていなくてはいけない。しかし情報は得るだけではただの消費に成り下がってしまう。私たちは天才じゃない。一度か二度聞いただけであらゆることをすぐに覚えて使いこなすことができるだろうか? 目的がビジネススキルを身につけることなら、まず1つのことに注力するべきなのだ。

「多数のものを一度か二度学ぶより、少数のものを何度も学ぶ」

これが最初の障害に対する対処法だ。

第2の障害:捉え方がネガティブすぎる

ノウハウ本やビジネス本を読んで起きる心理的反応に「こんなの自分にできるわけない」がある。こんなモヤっとした気持ちを覚えたことはないだろうか。

これは特別な人が書いた特別なことについて書いた本だ。自分とは置かれている状況が違うので当てはめられない。自分にはできない。否定的な反応はいくらでも湧いてくる。私たちは何かを受け入れることにネガティブすぎるのだ。

頭では理解できる。でもそれを受け入れるのは抵抗がある。学んだことをその通り実践できるまで普通は時間がかかる。最悪なのはためになったと理解をすり替えて、一部も成し遂げず全く実行に移さないことだ。

受け入れまでのめんどうな時間を減らす方法ないだろうか?私たちが新しいことに対して閉鎖的だというならやはりポジティブな意思で物事に向き合うしかない。すべてのことが自分にとって役に立ち、有益だと思うこと。この考えはどこかが間違っているなどと粗探しをするべきではなく、むしろ正しいところを積極的に探すべきだ。

「ポジティブな受け止めは可能性を引き出し、成長を促す」

第3の障害:フォローアップの仕組みがない

情報を絞りポジティブな気持ちで学習しただけでは、それで全てが役立つ行動につながるわけではない。学びを実行に変えるためには適切な練習が必要だ。

かなしいことに成り行きに任せた実践では学習効果が思うように上がらないことがほとんどだ。モチベーションが低下し、自分はなんのためにこの努力をしているのかと不要な自問自答をしがちになる。どこまでが正しく、うまくいかない理由がどこにあるのか、自分の姿は自分で見えない。

劇的な学習と適切な改善をもたらすにはやはり良質な指導が必要になる。仕事であればピアレビューやフィードバックが重要になるし、技術の習得であれば熟練した先達に指導を求めることが大切だ。

そしてなにより人は上達を褒められるとうれしい。他者評価によって学習と習得のサイクルが加速する。適切な評価と軌道修正の機会を得ることは学習効率に重大な結果をもたらす。最終的には学習者本人が自分を褒め、場合によって方向の修正を適当にこなせることが目標になる。そしてあなたは次の学習者のための指導者になれる。

「知識と実践のギャップを埋めるために適切なフォローを受ける」

これが最後の障害に対する対処法だ。

すべてに対するただひとつの処方箋:反復

情報、心構え、環境にかかわる障害を避する準備を整えることが出来たとしても、何かを身につけるプロセスは「よしわかった」と一筋縄ではいくわけではない。学習の段階は集中と熱心さによって補強されなくてはならない。スキルの学習にしても特殊な技能の習得にしても「反復」によってすべての障害を乗り越えることができる。

反復こそが学習を行動に、行動を成功に結びつける唯一にして最大の鍵なのだ。学ぶことそのものについても、3つの障害の克服についても、エネルギーを集中して反復することが実践の近道になる。あれもこれもでは何一つ身につかないことは体感としてよくわかっている。

時代の変化は早い。最先端の現場でもさまざまな技術が生まれ活用されている。しかし第一の原則をおもしだしてほしい。多くのことに目移りする情報過多の罠に陥ってはいけない。何かを身につけるならひとつのことを完璧に身につけることが真実の実力になる。ひとつひとつを着実に身に着けていく良好な学習サイクルのための反復なのだ。

最初の悩みを思い出してみてほしい。

「なぜ学んだことを身に着けられないのか?」

なぜってそれは学びを行動にする練習を繰り返して、考えてまた繰り返す。それをしてないからだ。

解決の方法はこの単純な原則にすべて示されている。