妄々録拾穂抄

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I wanna play a game. そしてすべてが始まる~「ソウ」(2004)~

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互いに面識のないゴードンとアダム。2人は見覚えのない古びたバスルームで目を覚ます。足はしっかりと鎖でつながれて逃げることはできない。2人の間には謎の自殺死体。部屋の中にあるのは1発の銃弾、タバコ、着信専用の電話、2本のノコギリのみ。彼らに告げられたルールはただひとつ、“6時間以内に相手を殺すか、2人とも死ぬか”。極限状態での2人の選択は……?

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自分で書くのめんどくさくてウィキペディアからあらすじ引っ張ってこようとおもったらラストまで書いてたわ。ややバレ。

その後も続編が作られ続けているソウシリーズも、どんどんエスカレートする舞台設定の大げささとピタゴラデス装置のゴア表現の過激さから比べれば、原点の本作は実に簡にして要を得たシンプルさですばらしい。もともと低予算制作映画でできることが限られていたというのもあるが。

自他問わず人命を軽んじている人間に生を賭けたデスゲームを仕掛ける"ジグソウキラー"の正体を巡るミステリーと理由もわからず監禁されたゴードンとアダムの脱出をかけたシチュエーションスリラーの2本の本筋が関係しながら最終的に一つの結末に合流していく展開がほんとすき。

小出しに提示されるヒントが何につながっているのか、ジグソウとは誰でいつ姿を現すのか、ゴードンとアダムは助かるのかという単純だが内容の詰まったストーリーラインで個人的には最後まで見飽きない。

さて、本作以降シリーズに通底する「生きることをモチベーションにいかにゲームを攻略するか」*1であるが、どう考えても生きることはすばらしいなんて人生観の変化などとは程遠い。ジグソウが仕掛けるゲームの根本原理としてなぜ生への執着をプレイヤーに求めるのかは展開の中で明らかになるものの、言ってしまえば彼自身の死生観が反映されているとか人間的な感情に根ざした哲学があるとかそんなものではない。

ジグソウ自身の動機として人生を無駄にしている人間への怒りみたいなものが存在するにしても、結局プレイヤー以外の人間は無碍なく殺しているところを見ると名目的な理由に動機づけられたゲームの遂行と観察だけが彼の行動原理であって、サイコキラーでしかないことがわかる。本当のプレイヤー以外はパズルのピースでしかないというのはジグソウの歪んだ信念の中では整合が取れてるのかもしれないが……。

というわけでゴードンとアダムどちらがジグソウの選んだプレイヤーなのかというのも終盤になると明らかになる。極限まで追い詰められた状態で逆説的に"死ねば生きられる”的な選択肢に追い込まれた2人のどちらが生き残るか、はたまた誰も助からないのか最後まで見届けて真っ暗な部屋で慟哭しよう。

 

*1:まあ続編ではお題目的にゲームの設定に使われてるだけでちゃんとジグソウの思想(歪んではいるが)が継承されているかは疑問である。