妄々録拾穂抄

MowMowしている

その悲鳴は絶望の惑星に響き渡る~「スクリーマーズ」(1996)~

西暦2068年、惑星シリウス6Bにより発見された鉱石「ベリニウム」の採掘を巡り、惑星開発企業「NEB」側と、労働者や科学者の連合との間で戦争が続いていた。惑星には連合軍が開発した「スクリーマー」と呼ばれる防御用兵器が投入されていた。「スクリーマー」が出没する地点は不明。所在不明の工場で製造され、生きるもの全てを襲うプログラムにより、今では連合軍側にとっても大きな脅威となっていた。

連合軍司令官ヘンドリクソンは無意味な戦争を一刻も早く中止するため、NEB攻撃部隊のエースと共にNEB基地へ和平交渉に向かった。核兵器放射線で汚染された雪原を進み、廃墟に隠れていた少年デヴィッドに出会う。

スクリーマーズ - Wikipedia

ロボコップピーター・ウェラー主演。原作はフィリップ・K・ディックの『変種第二号』。未読です。

原作の舞台はアメリカとソ連の戦時下の月基地だが、映画は架空の惑星での資源採掘を巡る企業と労働者側のエスカレートした戦争に変えられている。労働者側は科学者を巻き込んで自律的な防御用兵器を開発するが、それは次第に自身のプログラムを発展させ手のつけられない殺人兵器となっている。戦争当事者のどちらにも驚異となった殺人兵器「スクリーマー」が徘徊する中、新たな惑星で安全な資源が発見されたことにより終わりのない戦争かに見えた戦いの調停が進んでいることを知る。

もう戦いに意味はない。主人公は敵軍と交渉するため相手の基地へ向かうがすでにそこは全滅している。それどころか自軍の総司令までいつの間にか殺されていて、もう戦争どころではない彼は仲間の兵士とともに闇屋の女性や子供を連れ絶望の星からの脱出を模索する。

スクリーマーはえげつない。生きてるものを殲滅するためなら手段を選ばない。そんな殺人兵器が自律進化していつまでもわかりやすい見た目でいるはずもなく、というのがストーリーのキモでもある。人間にすら擬態したダーティーなスクリーマーの戦法と、終わりなき戦いと、最後に待ち受ける絶望とは。

スクリーマーたちの得体の知れない恐ろしさはエイリアン、どこまでも人間を殺戮する意思をもって追い詰めてくるのはターミネーターというのを想像してもいい。ピーター・ウェラーの顔面力と次第に追い詰められ人間不信になる絶望的な孤独感。今から見ると作りがチープに見えるかもしれないが、シチュエーションSFスリラーとして楽しんでほしいなと思う。

ラストの余韻にああ……、となって是非くまちゃんを抱きしめて眠ってほしい。